紙を開けてみると、あまり癖のない、綺麗な文字が並んでいた。
『今日はあのおじさんのハゲ頭でも描くか』
「……!」
私は吹き出しそうになるのをこらえ、紙の空いている部分にシャーペンを走らせた。
小さく畳んだそれを彼に投げ返す。
相変わらず、楽しそうな顔しちゃって。
『とびきり光ってるのよろしく』
『じゃー太陽の光、集中的に当ててやろうか』
なんてバカな会話をしてるんだろう。
でも、無言の会話はなんだかカップルみたいで、少し胸が高鳴った。
上野が苛立たしげに教室を出て行った瞬間、クラスメイト達は慌てて立ち上がった。
「もぉー!!上野まじで長げぇよ!!部活遅れちまうだろ!!」
口々に愚痴をこぼしながら、みんなあっという間にいなくなってしまった。
ぽつんと残された私達も、ゆっくりと立ち上がる。
「みんな大変だな。」
「ほんと。美術部はそのへん緩いからね。」
「俺達もそろそろ行こーぜ、麻衣。」
そう言って歩き出した彼の広い背中を見つめる。