病院の広い廊下を、蓮と並んで歩く。
足が異常に重く、今にも止まりそうなほどのスピードだった。
無言でそれに合わせてくれている連に、心の中で感謝した。
これからどうなるんだろう……。
私はどうすればいいの……?
そんなことを考えていた時だった。
「篠原麻衣ちゃんだね?」
不意に後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこにいたのは30歳位の男の人だった。
「そうですけど……」
真っ黒のスーツに身を包んだその人は、纏う雰囲気とは不似合いの、悲しそうな顔をした。
「この度は大変でしたね。お悔やみ申し上げます。」
「……あの、あなたは……」
「あっ、申し遅れました。私、篠原さんの後輩の中原って言います。」
「父の……」
「……これからの事を少しお話しませんか?お伝えしておきたいことがあります。」
この時に気が付けばよかった。
こんな見ず知らずの人と、これからの事なんて話す必要はないのに。
でもこの時の私は、そんなことを考えられるほど冷静じゃなかった。