「静かだろ、ここ」
「うん…」
ここは、本当に静かな場所。
「父さんはあんまり来ないけど、母さんはよく来てる。だけど、基本は俺一人。あいつらも遊びにはくるけど、あいつらにも家はあるし。夜景は綺麗だけど、街の音は聞こえない。俺一人だと、ものすごく静かなんだ」
南雲くんの言うことが、胸に突き刺さる。
こうやって静かな空間にいると、なんだか悲しくなって、心が落ち着かない。
さっきまでの騒ぎとは違う空間のようだ。
そしてきっと、南雲くんはとても儚い人間だ。
権力も、人望もあって、何一つ不自由ないはずなのに、今にも消えてしまいそうな、ガラス細工のよう。
「ねぇ、南雲くんは、自分の人生を変えられると思う?」



