「あ、えっと、」
「そんなはずねぇだろ、母さんだって知ってる通り、"南雲"の人間に会う機会なんて、早々ないもんだ」
「そうよねぇ。で、あなたは?」
「は、初めまして!七瀬 凛です!」
とっさに自己紹介ができたからよかった。
そう、南雲の名前が付く人間に、普通の人が会えるわけない。
あたしが普通の人間であるなら…。
「あ、結衣。ママね、パパが今日からアメリカに行くんだけどママもついていくから。たぶんすぐには帰らないからね」
「なら時間はいいの?」
「今から行くに決まってるじゃない!」
当たり前でしょ、と言わんばかりに他の部屋へ入り、すぐに着替えて大きなキャリーバッグを持ってくる。
しかもいつの間にやら、スーツを着た男の人達を従えて。



