「ーー着きました」


運転手が車を停めたのを確認すると、ドアを開け一気に駆け出す。



「まて!こんなとこ俺ら入れるのかよ!?」

「凛ちゃんっ!?」



あたしを呼ぶ声がするけど、走り出した足は止まらない。




「お待ちください、お客さ……凛様っ!?」



あたしを止めようとしていた正面玄関にいたホテルマンをも通過する。



廊下を走り、エレベーターホールに辿り着く。

エレベーターを待ってる時間は惜しいけど、高く広いこのホテルの非常階段を使うなんて、余程の非常時以外は無謀すぎる。


本当はスタッフルームの階段を駆け上がりたいけれど、そこにいく時間すら惜しいのだ。



走る以外は、何も考えられなかった。


周りで騒いでいる声も聞こえるけれど、そんなのどうでもいい。



目指す場所はただ一つ。