こいつも、彼女も、柵の中で生きている。
だからこそ、最後のチャンスだったのに。
「明日からだろ」
「…………」
「彼女、泣くと思うよ」
「…圭人が、慰めてあげて」
「バカ言うな」
「だよな」
「自業自得だ」
「…わかってる」
「…………」
「俺にはもう、彼女に近づくことはできない」
こいつの事情を知ってるから、明日からどうなるのかもわかってた。
今日を逃したら、後戻りできないのも知っていた。
「………じゃあ、な」
普段とは比べものにならないほどの頼りない背中をみせ、この部屋を出ていく。
お前がもっと欲を出せばよかったんじゃねぇかよ。
「ーーーー結衣」



