あまり、顔を見られたくないから、俯きながら名前を言う。
だけど、こういう人は、わりと厄介。
「…初めまして…?」
「っ…」
「君……」
"どこかで会った気がする。"
たぶんそう言おうとしてたんだろう。
だけど彼がそれを口にすることはなく、遠くから聞こえる花火の音でかき消された。
「始まったじゃねぇか!上行くぞ!」
「ダーリンも早く!」
次々と屋上へ向かっていく。
あたしは誰にも気づかれないようにそっと一息。
「花火かぁ…」
屋上へ足を進めると、それぞれが、それぞれの場所で花火を見ていた。
一番はしゃいでいるのは紫苑さんで、紫苑さんの隣りには南雲くんのお父さんがいる。



