白澤和真くん。
彼もよくここに来て絵を描いている。
近くの美大に通ってるらしいから、年は私と同じくらい。
黒縁眼鏡をかけていて、いつも柄のないシンプルなTシャツを着てる。
だから彼のTシャツにはいつも、世界に一つだけのカラフルな水玉模様が描かれている。
「今日はどんなの描いてるの?」
そう言って覗き込んだスケッチブックに広がる世界に、心が引き込まれた。
「うわ……きれー……」
青。
どこまでも優しい、透き通るような淡い水色がキラキラと輝く海。
その上を仲良く飛んでいく2匹のかもめ。
ベンチに腰掛けて寄り添いながらそれを眺める、おじいちゃんとおばあちゃんの後ろ姿。