目の前に広がっている一面の青を眺めながら、ペダルを漕ぐ足に力を込めた。





今日はよく晴れた日曜日。


最近この海には毎週通っている。


地元でも有名なこの海はいつも、散歩をしているお年寄りや元気に走り回る子ども達で賑わっていた。


弾けるような笑顔の子ども達とか、太陽の光でぴかぴか光る水面とか、日々変わるここの温かい風景を描くのが好きだった。


それに、ここにくればあの人とお喋り出来るし。





自転車を木の影に停めてトートバックを肩からかけると、通りなれた砂浜を歩き始めた。


サンダルで歩いたところがじゃりっという乾いた音を立てる。


眩しい太陽の光に目を細めながら、あの人の姿を探していた。




するとスケッチブックを手に、ぼーっと海を眺めている横顔を見つけた。




「おーい!和真くん!」




ふとこっちを向いた和真くんは、いつもの黒縁眼鏡の奥でふっと笑って見せた。