砂浜は走りにくい。
砂に足を取られて、なかなか前に進まない。
「……おい!待てよ!!」
走ってきたはずなのに、私の腕はいとも簡単に和真くんの手に捕まった。
「……突然どーした?なんかあった?」
そう言って私の顔を覗き込んだ和真くんの瞳はどこまでも優しく、ふわりと私を包みこむ。
「……なんでもない。手……放して。」
真っ赤になりそうな顔が見られないように俯くと、ふっと腕にあった温もりが離れた。
「そっか、俺には言いたくねぇか。」
上から聞こえた冷たい声に、とっさに顔を上げた。
「……あ」
どうしよ……。
こんなに悲しそうな傷ついた顔、初めて見た……。
ぱっと私に背を向けて遠ざかっていく後ろ姿を、どうすればいいのか分からずただ呆然と見つめていた。
違うの……。
そんな顔させるつもりじゃなかった。
でも、ごめん……
今の私にはあなたを追いかけることができない……。
最低だよね……私……。


