その言葉に私はぐっと息を呑む。
 こんな状況のままでこの後どうなるかってことは、いくら私でも予測できる。
 でも、こんな状況になるなんて思いもしなかったのは事実だ。

「……チョコ、欲しくないの?」

 視線を外し、私はどうでもいいことを口にする。
 しかし彼はさっきよりもさらに近づき、耳元で囁いた。

「欲しいよ。先輩のことも全部」

 そして、言い終わると同時に耳たぶへのキスが贈られた。
 私はその瞬間、背筋が痺れるのがわかった。触れられた耳が熱い。

「っ、和真くん」

 戸惑いを表すと、彼は意外にもあっさりと私を放した。
 一つ息を吐き、やれやれと言った様子で口を開く。