学校ではチョコレート合戦が待っていた。


今日は2月14日。


朝から女子は紙袋を手に、目当ての男子を待っているようだった。





「…はよ。今日は早いんやな。」

普段ギリギリの時間に登校する私は、朝から大地と話すことなんてめったにない。


「おはよ。」


今朝変な夢を見たせいで、なんだか気まずい。



「………。」


会話もないまま隣同士、暫くただ座っていた。



「なんで女子はあんなにはしゃいどん。」


突然喋った大地に目をやると、教室の隅できゃあきゃあ騒ぐ女子を見ていた。


「バレンタインだからじゃない?」


「あぁそっか。今日か。」


「……。」


再び沈黙が訪れた時、教室のドアが勢いよく開いた。



「柊くんいますか!?」


別のクラスの女子が目をキョロキョロさせている。


その目がこっちを向いて、見つけたと思ったのか、女子は教室に入ってきた。



「柊くん!ちょっと屋上来てほしいって!」

「は?誰が?」

「うちのクラスの子。いいでしょ?すぐ済むから!」


グイグイ腕を引っ張っている。

2人のやりとりを見ていたら、なぜか大地がこっちを向いた。


「……行ってらっしゃーい。」

ヒラヒラ手を振ると、女子は勝ったような顔で更に腕を引っ張った。


「お願いだから、ちょっと来てくれたらいいから!」



大地は傷ついた顔で私を見てから、やっと腰を上げた。



どうせ告白だろう。

こんなベタな呼び出しをする生徒がまだいるんだなぁなんて、ちょっとおかしく思った。