私に見られていたことなんて2人は知りもしないだろう。


はじめましてと微笑んでくる。


頭を下げて、どうもと返した。


「よみちゃんって呼んでいい?会いたかったの。」


にこやかに微笑む彼女と父の顔を見比べる。


「やっぱり私今日はやめておきます。すみません。」


扉を開けようと腰を浮かすと、父がそれを止めた。


「待ってくれ。よみ。お父さん、お前のお母さんとは離婚しようと思ってる。」


こんな状況だというのに、別に驚きはなかった。


「そうですか。」

「この人は、あやねさん。お父さんのことを支えてくれてる。」


「……。」


「よみちゃんが辛い思いをいっぱいしてきたことはお父さんから聞いたの。だから、私も何か力になりたいの。」


あやねさんはそう言って頷いてきた。


「離婚したら、あやねと一緒に暮らすつもりなんだ。だからよみも一緒に暮らそう。おばあちゃんたちにも迷惑かけてるしな。」


何が言いたいのか、ようやく分かった。


2人はいずれ再婚する。

そこに私を引き取ろうということだ。



私よりも大事な女と一緒に、私を引き取ってやるとわざわざ言いに来た。

そういうことだ。





私が1人で泣いていても、ぶたれていても、父は黙って家を出て行った。


仕事の帰りも遅くなり、待っても待っても深夜にならなきゃ帰ってこなかった。


たまに優しい父を私は心のどこかで助けてくれると信じて待っていた。


でもその間、父はこの女と2人で楽しくお喋りしていた。私の話までして。






何かに裏切られたような気分だった。


私よりもあやねを選んでいた父。

その現実を、突きつけられた気がした。