玄関の上がり框に、背中を向けて座る父がいた。


近づくと振り返ったその顔は、最後に見た時より若く見える。



「こんばんは。」

「おう、久しぶりだな。ちょっと話があるんだ。今から出られるか?」


兄とまるきり同じ台詞をいう父に、少し笑ってしまいそうになる。


「そんなに時間がかかる話なん…ですか?」

私はこの人とどうやって会話していたんだろうと、喋りながら考えた。

タメ口で喋っていたのか、敬語だったのか、それすらもうよく分からないくらい、この人と会話した記憶がなかった。


「なんで敬語なんだよ水臭い。」

はははと笑われて、タメ口で喋っていいのだと認識する。



「少し真面目な話なんだ。できたら食事しながら…」

「ごめんなさい。夕飯はもう食べました。」

「そうか。なら、デザートでも。な?少しでいいから付きあってくれよ。」


そこまで言われては断れない。


一度戻って祖母に出かけると告げると、心配そうな顔をされた。


「大丈夫だよ。寝てて。鍵は持っていくから。」

「わかった。気をつけてね。」



実の父と出かけるのに、何に気をつけたらいいんだろう。

そう思ったけど、口には出さないでおいた。