急いで支度して、駅まで一緒に歩いた。


なんとなく隣に並ぶのは悪いような気がして、少し後ろを歩く。



兄は私の予想とは裏腹に、実家の話なんて1ミリも話題に出さなかった。



高校生は大変だとか、学食っていうのが美味いだとか、最近流行ってるアイドルがどうだとか、拍子抜けするようなどうでもいい話を笑ってしてくれた。



そして兄は私の鼻のギプスについて何も聞かなかった。


ギプスについてだけじゃない。


私には何も聞いてこなかった。




ただ兄の話を聞いているだけでよかった。
身構えていた私にはとてもありがたいことで、相槌を打ちながらホッと胸を撫で下ろしていた。




思ったより早く学校に着いて、校門の前で兄と別れた。


「電話待ってるからな。」


その声に小さく頷いて、私は校舎に向かった。








「……おはようございます。」

「うぉあ!?よみ?お前今9時半だぞ?」


そーっと保健室に入ると青木先生が驚いて振り向いた。



「寝坊した。」


カバンに忍ばせておいたマスクのおかげで、ギプスは見えないはず。


できれば誰にも見られたくなかった。