大地が愛しくて、どうしようもなく愛しくて、頭がおかしくなるんじゃないかとたまに考えた。



大地に愛されている。


それだけで毎日が幸せに溢れていた。




今考えると、ただ現実逃避をしていただけかもしれないけれど。








家の中は相変わらずだった。

その日の祖父は酔っていて、いつもより余計にタチが悪かった。


「聞いてんのか!おい!返事しろ!」

何が気にくわないのか、祖母を蹴りつけている。しかも最悪なことに、右手にはゴルフのクラブを握っていた。


「やめなよ!」

間に割って入ると、すぐに突き飛ばされる。

酒のせいで手加減できないのか、いつもより力が強い。


「うるせー!すっこんでろ!」

振り回したクラブが食器棚を直撃し、皿が何枚か音を立てて床に落ちていく。



「危な…!」


祖母は頭に腕を回して動けないようだ。



「やめなって。怪我したらどうすんの。」


クラブを奪おうと掴みかかる。



もう初老のクセして、祖父の拳が私の顎を掠めたと思った瞬間、激痛が走った。



さらにクラブが目の前に迫って、一瞬後には痛みで声が出せなくなった。



鼻が…もげたんじゃないかと思った。



抑えた手の隙間から、大量の水気が溢れ出る。



「よみちゃん!」

祖母の叫び声が聞こえて、腕を引っ張られた。


そのまま外へ連れ出され、車のシートに放り込まれた。


口に鉄くさいものが広がっている。


耐えきれなくて、シートの上に溜まったそれを吐き出した。


相変わらず鼻を抑えた手の隙間から、黒いものが溢れ出ている。


頭がうまく働いていないのか、それが鼻血だと分かるまでかなり時間がかかった。



そのあまりの量と激痛に、さすがに恐怖した。



もしかして死ぬんじゃないかなんて、バカげたことを本気で考えてしまう。



とにかく、鼻の痛みは尋常ではなかった。