「なんだ藤沢。お前も帰れ。」


山口がポイポイと手首を振った。
だけど私は動かない。


「なんだよ怒ってんのか?お前も夜で歩いてんだろ。疑われたくなかったらそういうことすんな。」


めんどくさそうに溜息を吐かれて、何かが切れた。


「やってないって言ってた。」

「あ?」

「彼女、やってないって最初に言った。」


私の言葉に、川野さんがこっちを向いた。


「何言ってんだよお前。あのねぇ、こいつは補導何回もされてんの。窓ガラス割るぐらいなんともねーんだよ。それにやったって言っただろ。」


「言わせた。あんたが。」


何にこんなにイラついているのかはわからない。

ただ、何かに私はブチ切れていた。


「昨日何してたかなんて、なんであんたに言わなきゃいけないの?あんたになんか知られたくないことだってあんだよ。普段の素行が悪いから?ふざけんな。学校でいい子ちゃんやってる奴は絶対窓ガラス割らないなんて言いきれんのかよ。
本当のことを言えっつって、本当のことなんて聞く気がないのはあんたでしょ。」


止まらない私を、川野さんがじっと見ている。


「やったっつー根拠があるなら疑えよ。こんな脅しでやってもない犯人祭り上げんのが教師なら、教師って最低な仕事だね。」


山口は唖然としていた。

アホみたいに口を開けて、私を見下ろしている。


数秒時間が停止した後で、体が宙に浮いた。


そのすぐ後に背中に硬い壁が当たって、気づいたら床に落ちていた。


頬が熱い。


殴られたんだと気づくまでに、少し時間がかかった。



「てめー何しやがんだクソが!」

川野さんの声が聞こえて、山口に掴みかかっていく後ろ姿が見えた。


「何事ですか!」

ドタバタと足音が聞こえて、青木先生が入ってきた。


「こら!やめろ!離せって!」

川野さんを引き剥がす。

「離せよ!何で止めんだよ!こいつ、あの子殴りやがった!ふざけんな!」


そして初めて、青木先生の瞳が私を捉えた。



「どういうことですか山口さん!」

「……いや………」

「山口さん!何したんすか!」