教室に戻ると、担任が私を呼んだ。

「ちょっと山口先生がお呼びです。体育教官室へ行ってください。」


こんな時に呼び出しとは、嫌な予感しかしなかった。



そしてその2分後、その予感は的中する。



教官室には私のほかに既に5人の生徒がいた。


4人は男子で、皆カラフルな頭をしている。

1人だけ女子がいた。
床につきそうなほど長いスカートに濃い化粧、髪は黒だがパーマが当ててある。

ただ素直に、とても美人だと思った。




「いーかお前ら。正直に答えろ。昨夜はどこで何してた!」

山口の台詞に、自分たちが疑われていることを初めて知った。


「はぁ?俺らがやったとか思ってんの?アホじゃね?」

「ふざけんなよジジイ」


口々に抗議する男子を、山口が一喝した。


「黙れ!質問に答えろ!まずお前から!昨日何やってたか言え!」

指された赤毛の男子は不貞腐れたように答える。


「昨日は家にいたよ!妹もいたから家に電話すりゃいいだろうが!」


「じゃあ次お前。」

次は金髪の男子。

「俺はこいつらと俺の家にいた。お袋がいたけど疑わしいなら電話すれば?なぁ?」

残った男子2人が頷いて笑った。


「疑いが晴れたら何してくれんだよ?土下座?そんくれぇ胸糞わりーんだけど。」


「うるせぇ。お前らが普段から疑われるようなことやってんのがわりーんだろうが。舐めた口きいてんじゃねーぞ。」


山口は持っていた竹刀で床を思い切り叩いた。


こんなの、さっきの校長の話とまるで違う。

不良はこういう理不尽なことをされて当然。そう言っているように聞こえた。




「で、川野。お前は何してた。」

川野と呼ばれたスケバンの女子は何も言わない。

ただひたすら、山口を睨みつけている。


「なんだその目は?お前どっかの暴走族に入ってんだって?どうせ仲間とガラス割って回ったんだろうが!」


彼女は竹刀にも、山口の怒鳴り声にも動じない。

「やってねーよ。」

低い声で、それだけ言った。


「嘘つけ。この前も補導されてただろうが。やってねーなら昨日どこにいたか言え!」


「………。」

「あのなぁ、やったんならやったって言えよ。今なら大事にはしねーし、お前の不満も聞いてやる。な?」


「………。」


「おい川野!聞いてんのか?お前がここでしらばっくれて後から犯人がお前でしたじゃタダじゃすまねーんだぞ!正直に吐けよ」


竹刀が床を激しく打った。
山口が噛みつかんばかりに彼女にせりよっている。


川野さんはフッと笑ってこう言った。

「はいはいやりましたよ。」


その諦めたような声が、なぜか悲しく聞こえた。


「さっさと言えよ。手間かけさせやがって。お前ら悪かったな。帰っていーぞ。」


山口の声に男子たちがブツクサいいながら部屋を出て行く。


最後に川野さんと私だけが残った。