「よみー?今日一緒に帰ろ?」

放課後の教室で、さやかの声に振り返る。


「あれ?さや今日部活は?」

「今日は病院行くから休むんだー。まだ肩治んなくてさぁ。」

バスケ部のさやかは2週間前に肩を外している。もうそれほど痛くはなさそうだけど、運動部は大変だなぁとつくづく思う。



「あ。あれ葉山じゃないの?」

教室の扉から中を除き込むさやかの彼氏を見つけた。


「あ!ほんとだ!」


さやかが駆け寄ると、葉山は嬉しそうに笑った。さやかと同じバスケ部で、いつもは2人で登下校している。

誰が見ても微笑ましいぐらい仲良しで、毎日のように聞かされる惚気話も嫌じゃない。



鞄の中に教科書を突っ込んで支度を終えると私も2人の元に向かう。


「よみー!葉山も今日体育館使えないから部活サボるんだって!」

「うん?そうなの?」

「うん、さやか今日病院行くって聞いてたし、俺もどうせ自主練だから一緒に帰ろうかと思ったんだよね。」

「ああそうなんだ?」


つまりあれか。そういうことか。


「よみ!3人で帰ってもいい?!」

やっぱりな。



別に葉山は嫌なやつじゃない。でもさすがにカップルにくっついて帰る気にはなれなかった。

「あー葉山がいるならさやは葉山と帰りなよ。あたしちょっと行きたいとこあるし。」


「いや、藤沢も一緒に帰ろう。藤沢がいいなら俺は全然構わんよ。」

「そうだよ!よみも一緒に帰ろ!」


つくづく優しいカップルだとは思う。

だけどやっぱり断った。



「ごめんねよみ!メールするから!」


さやかの声に手を振って、2人と別れた。