それから1週間後、みんなは南の島へ旅立った。


さやかにはなんで行かないんだと泣きつかれ、終いには自分も行かないとまで言い出した。


だからさやかにだけは、家の人が許してくれなかったことを打ち明けた。



そんなさやかも今頃飛行機の中だろう。



私はといえば、いくら修学旅行に行かないとは言え学校には行かなければならない。


誰もいない教室は、なんだか異様だった。


このクラスだけじゃない。隣も、その隣も、そのまた隣も、この階全体が誰もいない状態なんだから当然といえば当然かもしれない。



こんなに静かなのは初めてだ。



この世には私以外誰もいなくなっちゃったような変な錯覚をおぼえる。



ガラガラガラ…


ちょっと悦に浸っていたのに、大きな音を立てて邪魔者が現れた。



「おはよう諸君!」

ジャージに便所サンダルのイケメンがいつも以上にうざ苦しい。


「おはようございます。」


「喜べ藤沢ちゃん。お前の学年で修学旅行をサボったのはお前だけだ!よってお前は今日から5日間、俺のマンツーマン授業を受けることができる!嬉しいか?!」


「はーい。嬉しいでーす。」


そういえばそうだ。担任も教科担当も、授業を受け持つ先生はみんな修学旅行に同行している。

残ったのはこいつだけだったわけか。



「しかしお前、修学旅行までサボるってどういうことなの。担任には行きたくないとしか言わなかったんだろ?泣いてたぜ。」


小太りの英語担当のオバさんが頭に浮かんだ。


「それともお前まさか、俺と2人っきりの授業受けたくて…」

「先生今日寝ぐせひどいよ。」

「あぁ?アホ!これは盛ってるって言うんだよ!俺のスペシャルヘアスタイル舐めんな!」


プリプリしながら私の前の席に腰を下ろした。