大量のチーズに苦戦しながら一切れ食べ終える間、テルさんはずっと喋り続けた。
「よみちゃんってさぁ、犬好き?犬。」
「……はい。」
「マジでー?何か飼ってんの?」
「いえ…」
「そうなの。んじゃ飼うならどんな犬がいい?」
「えと……ブルドッグとか……?」
「え、マジで。ぶはは!普通チワワとかダックスとかじゃないの?なんでブル?」
「……がっしりしてて…抱き心地がよさそう…かな……」
こんなくだらない質問をしてくるテルさんもテルさんだけど、律儀に答える自分もどうかしている。
「あーでも飼うなら絶対雌にしな。うち柴犬がいんだけどさ、雄なのね。で、俺と親父が近づく分には大丈夫なの。でもさ、お袋と姉ちゃんが近づくと完勃ちすんの。犬のあそこ勃ってんの見たことある?マジでグロいかんね。どんだけ可愛い顔してても引くかんね。マジで。だから絶対雌にしな。」
「………。」
なんで犬の性事情を教わっているのかわけが分からないけれど、とりあえず頷いた。
「あ、もっと食べる?とってあげる。」
私が食べ終えたのを確認してもう一切れ取ろうとしたテルさんに、もう満腹だと
断った。
「ピザ食ったらおっぱいでかくなるのに。あ、これGカップの子が言ってたから間違いないよ。メモっときな。」
「………。」
聞こえなかったことにしてごちそうさまと呟くと、テルさんも食べかけのピザを飲み込んだ。
「よみちゃん太陽に焦らしプレイしてるんだって?太陽しょげてたけど。」
テルさんの口調はそのままに、でも目元が少し鋭くなった。
焦らしプレイ…焦らしているつもりはない。ただ、怖くて逃げているだけ。
「よみちゃんは太陽を恨んでる?」
「恨んでなんて!…そんなんじゃ……そうじゃなくて………。」
「じゃあ、なんで避けてんの?」
「それは……怖くて…」
「何が怖いの?太陽が?」
違う。そうじゃない。
黙り込んだ私をじっと見据えて、テルさんはふーっと息を吐いた。
「先に言っとく。俺太陽と違ってなんでもストレートに言っちゃうから気を遣えないと思う。言わない方がいいこととか嫌なことも言っちゃうだろうけど、今からする話は1回しかしない。だから泣いてもいいから聞いてて。」
真剣な目が私をじっと見ている。
逃げちゃいけない気がした。
一度だけ頷くと、テルさんはタバコに火をつけた。
「昨日よみちゃんを襲った相手、あの金髪ロン毛ね。あいつ中学ん時のタメでね。太陽とも仲が良かったし、俺も嫌いじゃなかった。よく連るんで悪さしてたんだよ。…だけどさ、3年の時あいつヤクザの使いっ走りみたいなことやり始めてさ。スピード…あ、悪いお薬のことね。それを売りさばいて金儲けしてた。別にそこまではどうだってよかった。金儲けの仕方に口出すほど俺らも優等生じゃねーし。…けどさ、それを仲間に売り始めてな。中毒で自殺する人間が出るまでに事態は悪化した。太陽は絶対にそれを許さなかった。あいつは泣いて詫びてたよ。紅蓮にも入れてくれって頭下げに来た。だけど、太陽は許さなかった。…許せなかったんだろうな。」
衝撃的な台詞をスラスラと喋るテルさんの口元を見つめたまま、私は固まっていた。
「その後は、紅蓮の頭に捨てられたってレッテル貼られてたからな。よっぽど悔しかったんだと思う。今までもちょくちょくちょっかい出しては来てたんだけど、こっちが相手にしなかった。…こっからが本題なんだけど、昨日の抗争はそういう事情の末に起こった。太陽をその気にさせる手段としてよみちゃんが襲われたってこと。つまり、あんな股広げさせられて屈辱を受けたのは、太陽のせいだってこと。」
ふーっと吐き出された煙がゆっくりと登っていく。それを目で追いながら、たった今聞かされた真実を理解しようと試みる。
「だからね、太陽を恨む権利がよみちゃんにはあるんだよ。」
聞こえた言葉を理解できないままに、テルさんの口元を見つめた。
この人は、何を言っているんだろう。
「だからね。そういう理由で太陽を避けてるんなら、俺は何も言わない。だってあいつはそれ相応のことをやったわけだから。正直言って、昨日のよみちゃんを見た時俺は震えたよ。あんな大勢の前で、あんなカッコさせられて。おまけに挿入寸前だった。あんなひでーこと……クソ…」
目をそらしたテルさんが、苦しそうに唸った。
「………相当怖かったよな。マジでごめん。俺にも責任はある。……あの金髪は太陽が半殺しにした。もう二度とよみちゃんの前には現れないからそこは心配ない。」
半殺しってどういうことだろうとか、なんでテルさんが謝るんだとか、いろんなことが一気に頭を巡る中、悲しそうな瞳と視線がぶつかった。
「よみちゃんは今、俺らを恨んでる?」
「よみちゃんってさぁ、犬好き?犬。」
「……はい。」
「マジでー?何か飼ってんの?」
「いえ…」
「そうなの。んじゃ飼うならどんな犬がいい?」
「えと……ブルドッグとか……?」
「え、マジで。ぶはは!普通チワワとかダックスとかじゃないの?なんでブル?」
「……がっしりしてて…抱き心地がよさそう…かな……」
こんなくだらない質問をしてくるテルさんもテルさんだけど、律儀に答える自分もどうかしている。
「あーでも飼うなら絶対雌にしな。うち柴犬がいんだけどさ、雄なのね。で、俺と親父が近づく分には大丈夫なの。でもさ、お袋と姉ちゃんが近づくと完勃ちすんの。犬のあそこ勃ってんの見たことある?マジでグロいかんね。どんだけ可愛い顔してても引くかんね。マジで。だから絶対雌にしな。」
「………。」
なんで犬の性事情を教わっているのかわけが分からないけれど、とりあえず頷いた。
「あ、もっと食べる?とってあげる。」
私が食べ終えたのを確認してもう一切れ取ろうとしたテルさんに、もう満腹だと
断った。
「ピザ食ったらおっぱいでかくなるのに。あ、これGカップの子が言ってたから間違いないよ。メモっときな。」
「………。」
聞こえなかったことにしてごちそうさまと呟くと、テルさんも食べかけのピザを飲み込んだ。
「よみちゃん太陽に焦らしプレイしてるんだって?太陽しょげてたけど。」
テルさんの口調はそのままに、でも目元が少し鋭くなった。
焦らしプレイ…焦らしているつもりはない。ただ、怖くて逃げているだけ。
「よみちゃんは太陽を恨んでる?」
「恨んでなんて!…そんなんじゃ……そうじゃなくて………。」
「じゃあ、なんで避けてんの?」
「それは……怖くて…」
「何が怖いの?太陽が?」
違う。そうじゃない。
黙り込んだ私をじっと見据えて、テルさんはふーっと息を吐いた。
「先に言っとく。俺太陽と違ってなんでもストレートに言っちゃうから気を遣えないと思う。言わない方がいいこととか嫌なことも言っちゃうだろうけど、今からする話は1回しかしない。だから泣いてもいいから聞いてて。」
真剣な目が私をじっと見ている。
逃げちゃいけない気がした。
一度だけ頷くと、テルさんはタバコに火をつけた。
「昨日よみちゃんを襲った相手、あの金髪ロン毛ね。あいつ中学ん時のタメでね。太陽とも仲が良かったし、俺も嫌いじゃなかった。よく連るんで悪さしてたんだよ。…だけどさ、3年の時あいつヤクザの使いっ走りみたいなことやり始めてさ。スピード…あ、悪いお薬のことね。それを売りさばいて金儲けしてた。別にそこまではどうだってよかった。金儲けの仕方に口出すほど俺らも優等生じゃねーし。…けどさ、それを仲間に売り始めてな。中毒で自殺する人間が出るまでに事態は悪化した。太陽は絶対にそれを許さなかった。あいつは泣いて詫びてたよ。紅蓮にも入れてくれって頭下げに来た。だけど、太陽は許さなかった。…許せなかったんだろうな。」
衝撃的な台詞をスラスラと喋るテルさんの口元を見つめたまま、私は固まっていた。
「その後は、紅蓮の頭に捨てられたってレッテル貼られてたからな。よっぽど悔しかったんだと思う。今までもちょくちょくちょっかい出しては来てたんだけど、こっちが相手にしなかった。…こっからが本題なんだけど、昨日の抗争はそういう事情の末に起こった。太陽をその気にさせる手段としてよみちゃんが襲われたってこと。つまり、あんな股広げさせられて屈辱を受けたのは、太陽のせいだってこと。」
ふーっと吐き出された煙がゆっくりと登っていく。それを目で追いながら、たった今聞かされた真実を理解しようと試みる。
「だからね、太陽を恨む権利がよみちゃんにはあるんだよ。」
聞こえた言葉を理解できないままに、テルさんの口元を見つめた。
この人は、何を言っているんだろう。
「だからね。そういう理由で太陽を避けてるんなら、俺は何も言わない。だってあいつはそれ相応のことをやったわけだから。正直言って、昨日のよみちゃんを見た時俺は震えたよ。あんな大勢の前で、あんなカッコさせられて。おまけに挿入寸前だった。あんなひでーこと……クソ…」
目をそらしたテルさんが、苦しそうに唸った。
「………相当怖かったよな。マジでごめん。俺にも責任はある。……あの金髪は太陽が半殺しにした。もう二度とよみちゃんの前には現れないからそこは心配ない。」
半殺しってどういうことだろうとか、なんでテルさんが謝るんだとか、いろんなことが一気に頭を巡る中、悲しそうな瞳と視線がぶつかった。
「よみちゃんは今、俺らを恨んでる?」
