調子を狂わされたまま、とりあえず血は止まった。



「んで?どうだったの。」

「潰した。2週間は動けねーはず。」

「そう。」

「よみの方は?」

「かなりショック受けてるよ。自分のこと汚い汚いっつって、1時間も風呂入ってた。」

「…………。」



想像したら耐えられなくなったのか、深いため息が隣から漏れた。


「玲子ちゃん…そんなよみちゃんにオラオラ急かしたりしてないよね…?」

「ふざけんなハゲ。お前じゃねーんだから。優しくしたよ。そりゃもう極上に。」

「……玲子ありがとな。突然呼び出した挙句に世話焼かせた。すまねぇ。」

「あぁ?謝ってんじゃねーよタコ。それより、よみちゃんが寝る前にちょっとだけ聞き出せたんだけど…」



俺がハゲで太陽がタコかぁ。

こいつそんなタコ顔してねーけどなぁ…



なんてくだらないことを考えていたら、衝撃的な言葉が耳に入ってきた。


「なっ…?勇太が?!」

よみちゃんが誰かに殴られ意識を失う直前に、勇太を見たという。勇太が連れ去ったってことか?あり得ない。それはあり得ない。勇太は誰よりも太陽に懐いている。自分の主を裏切るなんてそんな事、あいつにできるわけ……



「間違いねぇ。俺もそれは確認済みだ。」

「は?おい太陽?勇太だぞ?お前のこと好き好き言ってくっついてきてたあの勇太だぞ?あいつがそんな…」

「見なかったか?最初に倉庫入った時に、隅で勇太が死んでた。もう多分兄貴が連れて帰ったはずだ。」


信じられない台詞に耳を疑う。もう何がどうなってるのかわけが分からない。



「よみちゃんは?なんかその辺言ってなかった?倉庫で勇太と話したとかさ。」

「言ってたよ。ただ、助けてくれようとしたっつー話だったけど。勇太がいなきゃ確実にハメハメされてた、ってよみちゃんは言ってた。」


「……どういうことだよ…?」



勇太はなんでそこにいた?なんで俺らが着く前にボコられてんだよ?






「とりあえず。あたしは帰る。今日ちょっと別件もあんだよ。」


「あぁ、ありがとな。」


「うるせーよ礼とか言ってんじゃねーよタコ!」


玲子なりの照れ隠しなのか、怒鳴り散らして出て行った。



静かになった空間に、傷だらけの太陽と残されて………俺も耐えられそうにない。



「俺も帰るわ。勇太のことは明日でいいか。」


「ん、そうだな。」


「あのさ、太陽。……俺お前のこと舐めてたわ。もう俺、お前が決めたんなら反対しねーよ。」


何を、とは具体的に言わなかった。

けれど通じたらしい。




片手を上げて頷いた太陽は、少しだけ笑った。