ただ、まさか引退するとは考えていなかった。



引退の話を聞いたのはそれから数ヶ月後で。俺は内心かなり驚いた。



集会で傘下の連中にそれを告げた時も、当然荒れた。太陽は下の連中にものすごく好かれている。反対するのも無理はない。


「なんで引退するんすか!理由はなんなんすか!」

「次の頭は誰にしようってんだよ!俺はお前についてきたんだぞ!」

太陽を慕って傘下に入った連中は、それなら自分もやめると口々に騒ぎ出した。



「俺が辞めるからっててめーらまで辞める理由にはならねーだろうが!自分のこともっとよく考えろ!」


怒鳴りつける太陽に、講義の声は止まない。


「なんで辞めんだよ!」

「もうそろそろ次の世代に交代する時だ。俺がそう思ったんだよ。」

「なんでだよ!わかんねーよ!」


結局話はまとまらず、次回に持ち越しとなった。


全員を帰した後、二人きりになった倉庫の中で俺は聞いてみた。


「よみちゃんか?」

「………なんかな。守るもんができると、もう意味のない喧嘩なんかアホらしくなっちまったんだよ。いつまでもこんなことやってるわけにもいかねぇ。…分かんねーか?」


わかんねーよ。マジでわかんねーよ俺には。でもなんか、なんとなく察することはできてしまった。


太陽にとって今1番大事なのは、紅蓮じゃない。よみちゃんっていう1人の女の子だ。



昔、バカな相手が太陽のセフレを囮におびき出そうとしたことがあった。


お前の女がここにいる。1人で来なきゃ回すと脅してきた相手に、太陽は一言「勝手にどうぞ」と電話を切った。


女ごときで揺れない。勝てない数にわざわざ1人で乗り込む意味はない。


そんな男だったんだけどなぁ…





もしよみちゃんが拉致られたら。

あの頃みたいに勝手にどうぞで終わらせるだろうか。

そんな不謹慎なことを考えてしまったことを、俺は後から死ぬほど悔やんだ。