玲子さんは私をリビングのソファに座らせて、自分は向かいの床に直接腰を下ろした。

「よみちゃん、あたしのこと誰だか分かる?」

ピアニッシモに火を付けて、こちらをじっと見ている。


「玲子さん…ですよね。」

まともに話すのは初めてだけど、一度喫茶に来たのは覚えている。日本人離れした綺麗な顔立ちは、一度見たら忘れない。


「知ってたか。そんじゃ話は早いな。」


白いネイルの施された綺麗な指で灰皿を引き寄せる。

その間も、目はこちらに向いていた。



「太陽のことは好き?」

唐突な質問に戸惑いながら頷くと、玲子さんは少し口元を緩めた。


「泣きたいなら泣けばいい。別にいきなりブチ切れたりはしないから。」



泣きそうな顔でもしてるんだろうか。

別に泣きたいわけじゃない。

だけどなんだかほっとして、私は黙って頷いた。



「悪いけど聞かなきゃならないことがいくつかあんの。ゆっくりでいいから全部正直に教えて。」


もう一度頷くと、玲子さんは質問を始めた。



「今日、どうやってあの倉庫に行った?無理やり連れてかれたのか、なんかうまいこと言われて着いてったのか。教えて。」


私は学校を出てから記憶がなくなるまでの出来事を、できるだけ詳細に話した。


一通り聞いてから、玲子さんが口を開いた。


「勇太を見たの?」

「いえ、見たような気がしただけで…すぐに見えなくなったから気のせいかもって…」

「そのあとすぐ拉致られたんだね?」

「そうです…」



チッと舌打ちして、あのクソガキが…と小さく唸った。



「わかった。じゃあ、次の質問。倉庫で何があった?だいたいは分かるけど、全部教えてほしいの。辛いだろうけど、絶対にもう二度と同じ質問はしないから。あたしだけしか聞いてないし、全部聞かなきゃならないから。」



私は頷いて、目が覚めたところからゆっくりと思い出した。



玲子さんは表情を変えずにじっと黙って聞いていた。



途中で泣き出した私にティッシュの箱を渡して、泣き止むまで待っていてくれた。



全てを話し終えると、いつの間にか玲子さんが隣に座っていて、何かを考えているようだった。



暫くの沈黙の後に、玲子さんが顔を上げた。



「挿れられてはいないんだよね?」

コクンと頷くと、ホントだな、と念を押された。


もう一度頷いた私の頭を撫でて

「ありがとね。これで質問は終わりだよ。」


低い声でそう言った。