どれくらい車に乗っていたのかわからない。


10分ぐらいだった気もするし、2時間ぐらい乗っていたようにも感じる。



車が止まった場所は、高層マンションの前だった。



「降りれるか?」


マスターが外から扉を開けて私を促す。

よろめきながら外にでた。





何度も来たことがある場所で、今はあんまり来たくない場所だった。






12階のボタンが押されたエレベーターの中で、この箱が故障で止まることを願った。

いや、どうせなら釣り紐が切れて落下してくれてもいい…


エレベーターがどんな構造かなんて知らないけれど、とにかく止まってほしかった。



でも。



無情にも目的地で扉を開いた小さな箱は、私に降りろと催促してきた。




手前から3つ目の部屋の前で、マスターが止まる。



チャイムも押さずに扉を開き、中に何か叫んでいた。




あぁ、どんな顔をしたらいいんだろう。


遥か遠くなった地面を見下ろしながら、飛び降りたら死ねるだろうかと考えていた。



「よみちゃん。おいで。」


女性の声に振り返る。


そこにいたのは、玲子さんだった。