「…失礼しまーす。」

「おう、来たか不良少女。」

「………。」


どいつもこいつも。

私のどこが不良なんだよ。

不良っていうのはもっとこう、金髪で不真面目でガニ股でガン飛ばしながら歩いてるようなのを言うんだよ。




「あん?どしたのその怪我。」

「怪我なんかしてません。」

「あぁ?んじゃその絆創膏はニセモノ?俺に心配してほしくて絆創膏貼ってきたの?なぁなぁ?」

「…………。」



鬱陶しい。柊に負けず劣らず鬱陶しい。

保険医のくせにいつもジャージに便所サンダルというチンピラみたいな格好で、正直ドン引きしている。だけど無駄に整った顔のせいで女子にキャーキャー言われて、完全に図に乗っている残念な人だ。



「マジでどしたの?藤沢ちゃん今日はご機嫌ナナメなの?」


「うん?うーん。うん、多分。」

「なに多分って。何があったの?俺が話聞いてあげちゃうよ。」


言いながら、あったかい紅茶を出してくれた。



「藤沢ちゃん今の授業なに?」

「えーっと、英語かな。」

「お前英語サボんなよ。お前の担任の授業だろ?」

「うん。」

「ったく。てかどしたのマジで。ちょい怪我見して。」


前髪をかきあげられて、反射的に身を引いた。

「だーいじょぶだって。俺、こう見えて保険の先生だから。絆創膏変えてやる。」


なかば無理やり額を晒されて、ぺりぺりと絆創膏が剥がされた。


「あらー。どっか角にぶつけた?まだ血にじんでるし。」

ちょいちょいと消毒液を塗られて、少し大きめの脱脂綿を貼り付けられた。


「何貼ってくれてんの…目立つじゃないですか。」

「だって絆創膏だとちょっと傷はみ出しちゃうし。綺麗に処置しとかなきゃ後で傷残んだぞ。」


別にいいのに。どうせ前髪で隠れるんだから。


「先生ありがとう。ベッド借ります。」

体調不良の生徒リストに名前を書いてカーテンを閉めた。


ひんやり冷たい布団の中で、さっき貼られた額のテープをそっと剥がした。