ズボンを下ろしかけていたホスト男の手が止まる。


ゆっくりとチャックを閉め直した。



「どういう意味?」

再び背後に消えた状況じゃ、声しか聞こえない。



「俺は女を、たいよ…狩屋を呼び出す手段に使うっていう約束だったから協力したんすよ。電話したんだから狩屋は来る。だったらもう手は出さないでいいでしょ。」


「……君さぁ、随分えらそうなこと言うね?」


カツカツと動き回る足音が、どちらのものなのかはわからない。


「なに?今更罪悪感とか感じちゃった?狩屋を裏切ったから?…本気でバカじゃねーの?」


ゴッと鈍い音に続いて、呻き声が上がった。



「女に危害は加えないって言ったのはあんただろっ…約束がちげーだろうが!」


「はぁ?危害なんて加えてねーじゃん。現に傷つけないように優しくしてやってんの、見なかった?」


あらぬ格好のまま放置された状態で、よくわからない展開についていけない。




勇太さんは何がしたいんだ…


私を助けたいの?殺したいの?



「うるせークソが!」


突如、鈍い音がして、複数の怒鳴り声が上がった。


「何しやがんだてめー!」

「ブチ殺っそコラ!」


私を拘束していた男たちも動き出した。


自由になった首を回して後ろをかえりみる。




そこには、50人近くの男たちに囲まれた勇太さんがいた。




次々と近くの人間をなぎ倒し、拳を振り回す。


一瞬、勇太さんが優勢に見えた…


…けれどそれはつかの間で




あっと言う間にリンチ状態になった。




血だらけの勇太さんを男たちが踏みつける。




それでもまだ立ち上がろうとしているその頭を、ホスト男が踏みつけた。




「裏切り者の癖に、情が湧いちゃった?…俺、そういう奴だいっきらいなのね。」



ごつっと頭を蹴られ、口から血が飛び出した。




勇太さんが。死ぬんじゃないか…




こんな壮絶な喧嘩を見たことがない私には、本気でそう思えた。



しばらくして勇太さんはピクリとも動かなくなった。




床に伸びた血だらけの姿は、死んでいるようにも見える。





ここまでやる必要があるの?

1人なのに…こんな大勢で……





「ひどいと思う?」


いつのまにかホスト男がそばにいた。


「でもね、喧嘩にルールなんてないんだよ。勝った方が強い。そんだけなの。」



動かない勇太さんを何人もが脇に蹴り飛ばし、再び私は拘束された。




「さぁて。震えちゃってる。刺激が強すぎたかな?……これからもっと、強いの与えてあげる。」



上げられた口角に、今度こそもう終わりだと悟った。