翌日。


溜まり場となっている喫茶の駐車場には、数え切れない台数のバイクがとまっていた。


こんな人数が店内に収まるとは思えない。


そっと扉を開けると、中にはマスターしかいなかった。




「あぁよみちゃん。今日はみんな裏にいるからVIPだよ」


私に気づいてコーヒーを出してくれた。



マスターは、メンバーの一人のお兄さんだと聞いている。喫茶には似つかわしくないいかついマッチョで左頬には大きな傷がある。


今はものごしも柔らかくて優しいけれど、昔は相当荒れていたんだろうな…




「裏って倉庫ですか?」

この喫茶にはかなり大きな倉庫がある。普段はそこでみんなバイクをいじったり、筋トレなんかをやっている。



「うんそうそう。さすがにここには入らないからねぇ。」


のんびりと煙草をくゆらせながら、私にも灰皿を出してくれた。



「なんで自分は呼ばれないんだろって思ってる?」


ふいに言われて顔を上げた。

思ってない、と言えば嘘になる。




「あたしは…紅蓮の一員ではないんですよね。」


「うーん。俺は一員だと思ってるけど。」

「……でも。」


「チームに入ってるか入ってないかなんて、ちっちぇえことだよ。仮によみちゃんが一員じゃなかったとしても、紅蓮の連中はよみちゃんを認めてる。そうだろ?」


そうなのかな。誰にも何も言われたことがない。


「よみちゃんは太陽にとって大事な女だからね。太陽にとって大事なモンは、連中にとっても大事なモンなんだよ。」



「マスター…」


「俺は太陽のことずーっと見てきたからな。ションベン垂らすガキの頃から。だから分かる。あいつには人を惹きつける力がある。だからあんなにデカいチームの総長なんてやってんだよ。太陽がきめたなら間違いはねぇ。よみちゃんは何も心配すんな。今まで通り、よみちゃんでいてくれりゃそれでいいんだよ。」




マスターの言いたいことは、なんとなくだけど分かる。


何処か太陽さんに似た優しい声が私を落ちつかせた。








結局、待ちくたびれて眠るまで、誰も倉庫から出てこなかった。