それから間も無くして、太陽さん引退の話はメンバー全体にも広まった。



太陽さんが近すぎてあまり意識したことなんてなかったけれど、総長と名のつく立場の引退はかなりの大事らしい。





「勇太、明日の5時に召集かけろ。全チームだぞ。」



勇太さんと奥でトランプをしていたら、太陽さんが入ってきた。



「はいっ、これから幹部どもにメール回します。」



神経衰弱を放り出し、携帯をいじり始めた。




「よみ、後で俺と勇太とババ抜きしような。」


対戦相手をとられた私を哀れに思ったのか、頭を撫でた太陽さんは、けれどすぐに出て行った。




「明日なんかあるんですか?」



トランプを片付けながら聞いてみる。

メールを打ちながら勇太さんが答えてくれた。



「太陽さん、ガチで引退する気なんだよねー。だから多分明日、全員集めて跡継ぎとか決めんだな。」


「全員て、太陽さんのチームの?」


「ん?よみちゃん渚からなんも聞いてねーの?」


呆れたような顔をした後、詳しく説明してくれた。




勇太さんの話によれば、太陽さんは「紅蓮」のトップ。


その紅蓮のメンバーは全部で54人。そしてその傘下に20のチームがいるらしい。



私は一度も見た事がないけれど、大きな抗争となれば傘下のチームも応援に加わる。



それら全てをまとめているのが太陽さんなのだと聞かされた。



さらに、私がいる渚さんのチームは、紅蓮の傘下にあるレディースチームの更に下についているポジションらしく。


中学を出たらそこから初めて名前のついたレディース「夜蝶」のメンバーになるらしい。



一度だけ、夜蝶のトップに会ったことがある。


太陽さんが玲子と呼んだ、赤い特攻服に身を包んだその人は、目つきの鋭い美女だった。



「渚はもう卒業したからな。今はそっちに入ってるよ。最近こっちに顔出さねーのもそのせい。」



勇太さんの話に頷きながら、疑問が湧いた。



「んじゃ、勇太さんは?中学ん時からずっと太陽さんと一緒にいるじゃないですか?」



確かにここにいる中学生は私を含め勇太さんと渚さんの3人だけだった。



「俺はさー、太陽さんに拾われたから。太陽さんが3年の時。まだ紅蓮じゃなかった頃にね。そんときから、ずっと太陽さんについていくって決めたんだよー。まだ中坊の俺が紅蓮に入れたのも太陽さんのおかげ。」


何処かさみしそうに言ってから、勇太さんは続けた。


「渚は玲子さんに拾われた。あいつラリってたからさ。玲子さんに喧嘩売ってタイマン張ってガチ負け。でもその後拾われて、玲子さんが夜蝶の下につかせたんだよ。」



そうだったのか。私は何も知らなかったんだと改めて思った。



「よみちゃんは、渚が拾ってきたからね。俺らはノータッチでって太陽さんに言われてた。召集だってよみちゃんにはかけるなって言われてたし。」


「……。」


「渚がなんも説明してなかったっつーことは、多分渚もよみちゃんを夜蝶に引っ張るつもりはなかったんだと思うよ。俺はてっきりそのつもりなんだと思ってたけどね。」