そう実感すると、言い知れない孤独感がわたしを襲った。
……ぞくり。
背筋に寒気が走る。
その時だった。
トン。
「っつ!!」
わたしの右肩に生温かい何かが乗ったのを感じ、体が反射的に跳ねる。
「ひとりでいると危ないよ?」
上から降って来たこの声は知っている。父の知り合いの、倉橋 千歳(クラハシ チトセ)さんだ。
だけど、本当に倉橋さんなのかな?
違うモノが化けているんじゃないかな?
なにせ、『彼ら』は、成り済ますのがとても得意だ。
もし、今わたしが見ている倉橋さんが偽物だったとしたら……。
わたしを恐怖へと突き落とそうとしている『彼ら』だったとしたら……。
すごく怖いけれど、本人かどうかを確かめるため、涙でゆがんだ視界のまま、顔を上げた。
すると、眼鏡の奥から覗く、優しそうな目がわたしを見ていた。
「倉橋さん……」
どうやら本当に倉橋さんだったみたい。



