そっか、ここ、山奥なんだ…………。
男の人が言うとおり、わたしは誰も襲っていないというのなら、いったいどうしてだろう?
なぜ、霊体たちの声はしないの?
なぜ、わたしは意識を失っても体は乗っ取られていないの?
今朝は、たしかに霊体の存在を感じたし、頭の中では煩(ウルサ)いくらい、わたしを苦しめる言葉を聞いた。
それなのに今は何もない……。
この人の傍にいるようになってからだ。
もしかして、この人も倉橋(クラハシ)さんと同じ霊媒師なんだろうか?
だったら、霊体を遮断することも出来るかもしれない。
「あ、あの……」
わたしが口をひらくと、男の人は首を傾げて急かすことなく言葉を待ってくれる。
お父さんと同じだ……。
男の人が、父の面影とかぶさった。
胸が切なさでいっぱいになる。
「あなたは……」
続きを言いかけて口を閉ざしたのは、突然『貴方は霊媒師ですか?』なんて訊けないと思ったから。



