天国にいる父は、今のわたしを見ているだろうか。
縁の下におりて広い庭へと足を運び、空を見上げても、シトシトと降る雨は、やっぱり止む気配さえない。
真っ黒な黒雲しか見えなかった。
そんな中、わたしは目の前にある大きな大木に隠れるようにしてそっと腰を下ろした。
そして、けっしてみんなの前では流すことを許さなかった涙が、頬を伝って流れていく……。
泣きながら思い出すのは、父と過ごした、苦しいけれど、楽しい日々だった。
みんなが言うとおり、わたしの父は、実の父親じゃない。
それなのに、父はわたしを実の子供のように育ててくれた。
――それは、今日のような雨がシトシトと降る日だったらしい。
わたしの義理の父親、清人さんは、普段、あまり通らない山道をたまたま歩き、道端に捨てられていた、当時1歳くらいの赤ん坊のわたしを拾い、育ててくれた。



