わたしが微笑んだのは、そうしないと、安心して離れてくれないと思ったからだ。
紅さんにはもう、気を遣わせちゃダメなんだ。
大声で泣きたくなるのをガマンして、微笑んでいると、彼は静かに口をひらいた。
「紗良は平気かもしれないんだけどね、わたしは君が傍にいてくれないと、うさぎのように寂しくて死んでしまうよ?」
――えっ? 死ぬ?
そんなことあるはずがない……。
紅さんなら、わたしよりもずっとずっと素敵なお嫁さんを見つけられる。
わたしのような汚い奴じゃなくて、優しくて、あたたかくて、思いやりにあふれた女性を探せる。
「そんなことはな……」
「……くはない。わたしは君以外に愛おしい人を見つける自信はないね。
君が何度逃げようとも、追いかける自信はあるけれど」
どうして?
どうしてそんなことを言うの?
わたしが必死に紅さんとお別れしようと思っているのに……。



