黒い髪の中に白髪が混じっている……わたしが好きな倉橋さんだった。
倉橋さんが元に戻った……。
その証拠に、大鎌が彼の手から離れ、重い音を立てて地面に転がる……。
倉橋さんは、自由になった両手で頭を抱え、うずくまった。
「倉橋さんっ!!」
正気に戻ったの?
わたしは慌てて倉橋さんの傍に駆け寄り、顔を覗き込む。
「紗良……くん……わ、たしは……」
荒い息のまま、そう言うと、顔を上げてわたしを見つめる。
その目は、とても穏やかだった。
「私は……なんということを……」
「もう終わったことだよ? もう、いいの」
首を振って、何もなかったんだとそう告げれば、倉橋さんは頭にあった手を、今度は胸元に置いた。
「いいや、終わっていない。逃げろ、紗良君、早くっ!!」
彼の眉間に皺が寄る。
胸元を押さえていた手が、心臓を握るようにして強く握りしめる。



