ごめんなさい。
叫ぶ倉橋さんに、もう一度、心の中で謝ったわたしは、霊力を集中させ、鎖を解くことだけを考えた。
鎖が悲鳴を上げはじめる。
そして……。
ピキンッ。
わたしが手にしていた鎖の、たくさん連なっている輪っかのひとつは真っ二つに割れ、杏子さんの魂がふんわりと浮いた。
それは体からの離脱を意味していた。
杏子さんの姿をした魂は、閉じていた両目をゆっくりとひらかせていく……。
間もなくして、スモーキークオーツのような、柔らかい瞳があらわれた。
「……ありがとう」
杏子さんはそう言ってにっこり微笑む。
その姿を見て、わたしはあらためて自分のしたことが間違いじゃなかったんだと確信した。
好きな人には生きていてほしいっていう倉橋さんの気持ちはわかる。
わたしもお父さんを失って、ひとりぼっちになってしまったから……。



