『紅』
また、彼女は紅さんのことをそう呼んだ。
まるで、紅さんを自分のものみたいに……。
……わたしは紅さんの追っかけじゃない。
わたし、ちゃんと紅さんと付き合っている。
彼女が彼氏に会いに来て何が悪いの?
――ホラ、言ッタダロウ?
コウイウコトナンダッテ。
コノ女ハイツカソウヤッテ紅サンヲ自分ノモノニスルゾ?
一度は消えたと思った、わたしの中にある醜い『ソレ』がまた姿を現し、誘惑する。
「……っつ!!」
紅さんが取られる!?
そんなの、いや。
――ダッタラサ……。
コロシテシマエバイイ。
ジャマナヤツハゼンイン。
そうだ……邪魔な人たちは殺してしまおう。
わたしが誘惑に同意した瞬間だった。
わたしの視界は突然虚無になり、体はまるで地球上の重力が覆いかぶさるようにズシリと重くなった。



