たしかに、ここに紅さんの姿は見えない。
でも……薔薇の香りはずっとわたしの鼻腔(ビコウ)をくすぐり続けている。
やっぱりこの優しくてお腹をムズムズさせるような刺激的な薔薇の匂いは、わたしにしかわからないみたい。
「あの……」
わたしは紅さんがいるっていうことをふたりに言おうと口を開けた。
その直後、バーの中にいた数人の女性と男性がこっちに向かってやって来るのが見えた。
たぶん、目的は真赭さんと生成さんだ。
ふたりとも、すごく綺麗だものね。
わたしは真赭さんと生成さんの影に隠れるようにして身を引いた。
そうしたら案の定、数人の女性と男性はふたりに声をかけた。
……邪魔、になるのかはわからないけれど、とにかく、ここにわたしはいない方がいい。
紅さんの場所はもう大体わかるし、ひとりで行ってみよう。
わたしは真赭さんと生成さんから離れ、薔薇の香りが導く方へと歩いた。



