「おそいわよ馬鹿生成」
先にバーへ入った真赭さんは頬を膨らませ、後から来たわたしと生成さんを見るなり、ふてくされていた。
こういう表情の真赭さんは、やっぱりわたしと同じ年くらいなんだと思ってしまう。
彼女が妖狐だということをすっかり忘れてしまうのは、愛嬌があるからだ。
「もっ、申し訳ございませんっ」
ふてくされている真赭さんに腰を折り、何度も謝る生成さん。
そんなふたりを目の端で捉(トラ)えながら、わたしは店内を見回して、紅さんの姿を探す。
バーテンダーさんと同じように白い長袖カッターシャツと黒いベストとズボンの制服を着ているウェイターさんは数人いる。
……だけど、紅さんの姿が見えない。
「いないのよねぇ、紅兄(クレニイ)。せっかく紗良を連れてきたっていうのに……。店内にはいないのかな?」
わたしが店内をキョロキョロと見渡していると、やっぱりふてくされながらの調子で、真赭さんはそう言った。



