「大丈夫だよ、私は紗良くんを助けに来たんだ。その紗良くんを助けた彼と戦う理由がない。
そうか……君はそれでいいんだね」
倉橋さんはそう言って、わたしの頭を撫でてくれる。
……よかった。
倉橋さんは紅さんと戦わない。
安心したわたしは、詰めていた息をそっと吐いた。
「あ、あの……中、入りませんか?」
「いや、やめておこう。
いくら戦わないといっても、やはり彼とは敵対している者同士だからね。
紗良くん……」
「はい」
「君を守っている彼が、いったいどういう性格なのかは分からないが、一般的に言われる『妖狐』というものは人間を騙(ダマ)す。
彼らは今まで、幾度となくそうやって人間を貶(オトシ)めてきた存在だ。
心配しすぎかもしれないが……」
「大丈夫です、紅さんはそんなことはしませんから……」



