それなのに、紅さんはそうやってわたしを追い詰めてくる。
なんて……ひどい。
紅さんはひどい!!
その時、わたしは、はじめて紅さんを恨めしいって思った。
これは、今まで生きてきた中で、わたしが考えもしなかった感情だ。
……知らなかった。
わたしの中に、こんな感情があったなんて……。
「紗良、わたしにしたら、その仕草は誘惑も同然なんだよ?」
すぐ目の前でそっと告げられる言葉。
……………。
してないしてない、してないっ!!
それはとても勢いよく、わたしは力いっぱい、ブンブンと首を振った。
「誘惑なんてしてないですっ!!」
抗議する声は恥ずかしくて震えてしまう。
伸びてきた手によって、わたしの両手が顔から外された。
「やっ!!」
真っ赤な顔を見られる!!
恥ずかしいっ!
わたしは顔が赤くなるのをなんとか誤魔化(ゴマカ)すために、口を窄め、眉尻を上げて紅さんを睨(ニラ)んだ。



