「君を抱きたくなるっていう意味」
耳元でそっと囁かれた。
「……だっ!?」
抱く!?
恥ずかしい。
射抜くように見つめてくる赤茶色の瞳から視線を逸(ソ)らし、俯(ウツム)いた。
みぞおちが熱くなる。
顔だって熱い。
きっと、全身真っ赤だ。
しかも、わたしは紅さんと至近距離にいるわけで……っていうことは、わたしが恥ずかしがっていることも、もう丸分かりだ。
「やっ……」
だけど、真っ赤な顔は見られたくない。
恥ずかしくて両手で顔を覆った。
「そういう仕草もね、とても可愛いんだけれど……。紗良、君はわたしを誘惑してどうしたいのかな?」
コソリとわたしの耳孔(ジコウ)に息を入れながら、紅さんはそう言った。
っんなっ!!
「ゆうわっ!?」
誘惑なんかしていない。
わたしはただ、恥ずかしくて、必死に顔を隠そうとしているだけ。



