わたしの目に唇がやって来たから思わず目を閉じると、両瞼(リョウマブタ)に弾力のあるものが触れた。
それが紅さんの唇だとわかったのは、目を開けた時に紅さんの顔が間近にあったから。
「っ、くれないさんっ!!」
驚いて名前を呼んだら、何もなかったようにまた続きを話しはじめる。
「滑らかな、絹のような真珠の肌は……いつまでも口づけたい衝動にさせてくれる……」
「え? あっ……っん」
スルリとわたしの頭を撫でられ、頬に唇が当たる。
そのまま首筋へと向かって、鎖骨を舐められた。
鎖骨に当たった唇はそのまま吸い上げられた。
ビクン。
わたしの体が震えてしまう。
「君がわたしの名を呼ぶたび、どんなに君が欲しいと思うか、紗良、君は知らないだろう?」
「な……まえ……?」
「そう、名前……」
紅さんはにっこりと微笑む。
「この……雨の香りが容易くわたしを惑わす。
この香りこそ、我が妻の証……」



