「そう、知恵をつけた狐が長く生き延びた末の存在。
わたしたちは成人するまで、雪国の人が踏み入らない土地でひっそりと暮らす。
争い事は好まず、ただ、己の生きる術のみを見出し、子孫を育む。
だが、成人すると故郷から離れ、こうして散り散りになり、花嫁探しの旅に出る。
すべては、己の香りに導かれた魂の伴侶、つまりはソウルメイトを探して……」
「魂の……伴侶?」
「そう、伴侶。ふたつに分かれた同じ色の魂。
己を高めあうための存在。
そして、魂を揺さぶる愛しき片割れ。
わたしの……魂の匂いを嗅げる、唯一にして最愛の花嫁」
……するり。
目尻から流れ続ける涙が、紅さんの人差し指によって受け止められた。
「紗良、人外のわたしを怖いと思うかい? 気味が悪いと、そう思うかい?」
目の前にいる紅さんを見つめていると、彼の眉尻が下がっていく……。
微笑みには変わりないんだけれど、なんというか、悲しそうな感じ……。



