……トクン。
真摯(シンシ)な眼差しに、わたしの胸は高鳴る。
今にもわたしの口と紅さんの唇が触れそうな距離……。
その距離で、紅さんは静かに息を吐き……。
「わたしは、欲するならば愛おしい花嫁を欲したい。
君が言うとおり、わたしは君から見るといかがわしい人外だ。
わたしの一族の名は妖狐。王族を引き継ぐ者。紅……」
「妖狐?」
紅さんが……妖狐族の王子様?
そっか、だから生成さんは、紅さんのことを『若』って呼んでいたんだ……。
紅さんの口から出た言葉は、わたしを驚かせるものでしかなかった。
今まで、わたしは霊体しか見たことがなかったから、おとぎ話のような、そんな存在がいることを知らなかった。



