……いらない。
優しいキスなんていらない。
あたたかい微笑みなんていらない。
わたしに必要なのは、ナイフという鋭い武器だけだ。
「紗良……」
「好きなのに……すごく好きなのに……。
もう、これ以上……紅さんを好きだと思わせないでよっ!!」
言った瞬間だった。
「んっ……」
わたしの口が、また塞がれてしまったんだ。
「んっ…………」
なんで……。
いや。
こんなの、イヤ。
想われてもない人からのキスなんて、苦しいだけ……。
これは、わたしを襲う霊体たちよりも酷い仕打ちだ。
「んっ、んんっ!!」
なんとか紅さんから離れようと、手に力を入れても、びくともしない。
わたしは精いっぱい体を捩(ヨジ)る。
それなのに……。
ここから抜け出したいってそう思うのに、体は、与えられる熱い体温で脱力してしまう。



