わたしを包む腕によって口角を変えられる。

……また、深いキスが与えられた。



ドクン、

ドクン。


心臓が跳ねて、音を奏でる。


静かな空間の中、わたしの心音が鳴り響いている。


ドキドキするのは、好きな人から与えられるものだから……。



わたしを覆っているその人は、わたしが好きな人――。


紅(クレナイ)さん……。




だけど、どうして?


どうして、紅さんはわたしにキスをするの?




だって、わたしは今からあなたに殺されるっていうのに……。




「……っつ!!」

そう……そうだ。



紅さんは、ただわたしの魂が欲しいだけ……。





……わたしは馬鹿だ。

また、同じ間違いをするところだった。


このキスは、わたしを想っているものではないのに……。



勘違いしてしまいそうになるなんて!!



そう思うと、胸のドキドキはズキズキへと変化する。