「まっ、待て!! な、ソイツの魂ならお前にやる。
少しの、欠片だけでいいんだ。俺に分け与えてくれさえすれば!!
な、いいだろう? ほんの一粒でいいんだよ」
……そうだ。
紅さんもわたしの魂を狙っているひとり。
だったら、無用な争いでわたしの魂を奪い合うよりは、ふたりで分かち合う方がずっと要領がいい。
……胸が潰されるみたいに痛い。
でも……それでいいのかもしれない。
これで、わたしは……この世界からいなくなることができる……。
紅さんを見るのは、これが最後。
そう思って、わたしは苦しくて泣きそうになる目を瞬(シバタタ)かせ、紅さんの姿を焼き付けた。
「この期に及んで……。君は愚かだね……」
紅さんの、その言葉は、蜘蛛の意見を拒絶したことを意味した。
そして、紅さんが蜘蛛から飛びのいた直後、蜘蛛の体に無数の赤い亀裂が入った。



