美狐はベッドの上で愛をささやく


それとほぼ同時だった。

大きな何かが崩れ落ちるような音が……聞こえてきたんだ。


痛みは……やって来ない。



え?

どういうこと?



現状が把握できなくて、そっと目を開けると、そこには――……。



「ばか……な」


目の前で、黒い物体が地面に倒れていた。


黒い蜘蛛の、6個あるうちの、ひとつの目が緑色の血を流していた。


その傍では――……。


長身ですらりとした体型に、赤茶色の髪をした、綺麗な男性……。


紅さんが立っていた……。




たしかに、紅さんは蜘蛛に踏みつぶされたと思った。


それなのに、今彼は蜘蛛の上に颯爽(サッソウ)と立っていた。


「何故だ……」

わたしの疑問も蜘蛛と同じだった。


蜘蛛は、かなりの致命傷を受けていることがわかる。

荒い息をたてて、地面にひれ伏している。



対する紅さんは、息も上がっていないどころか、淡々とした口調で言葉を綴っていく……。