こういう場面は初めて見るけれど、無知なわたしでも男の人が何かを仕掛けてくるだろうっていうことは理解できた。



「これは好都合だ。あの方にいただいた力を試してやる!!」



男の人が『あの方』という言葉に反応する暇もなく、皮膚がはがれ落ちるような、ビリビリという耳障りな音が周囲に響いた。


耳を塞いでいないとどうにかなりそうなくらい、とても気持ちが悪い音だ。




わたしは両手で耳を覆い、対峙しているふたりを見つめる。




すると、目の前にいた男の人の姿は消えて、その代わりに大人3人分くらいはあるだろう、巨大な漆黒の蜘蛛が出現した。




漆黒の体にはそれぞれ6つの大きな目があり、公園全体を映し出している。

巨体から生えた無数の長い足が地面を這う。


体の側面からは、数本の細い糸が吹き出していた。





「さあ、楽しもうか……」




巨大な蜘蛛は体に貼りついている6つの目を細める、口から吹き出していた白い糸を勢いよく四方八方にまき散らした。