だけど、紅さんはわたしが考えていたような人じゃなかった。
それを教えてくれたのは、皮肉にもわたしを襲った男の人だった。
「貴様…………人間じゃないな……。
人外(ジンガイ)か……? 大方お前もそこの魂を手に入れようとしているのだろう?
だが、そいつは俺のモノだ……」
――え?
互いに様子を探りあっているようなふたりは距離を保つ中、男の人の言葉がわたしの全身を貫いた。
『人間じゃない』
『人外』
その言葉が、わたしの頭の中でグルグル回る。
紅さんが……霊体みたいな存在だと言うの?
でも……でも……。
紅さんは、そんなふうには思えないくらい綺麗で……いつも笑っていて……優しくて……。
男の人の言葉が信じられない。
紅さんの様子を窺(ウカガ)うけれど、やっぱりわたしの位置からじゃ背中しか見えない。
どういうことかと、紅さんの前と対峙(タイジ)している男の人を見つめると、男の人は前のめりになり、両腕を体の前で、だらりと流した。



